山猿
山口県大津郡三隅町は、山口県の北西部、中国山脈の始まる場所に位置し、
一部を日本海に面した山紫水明な町である。町の中心部を東西
に三隅川が貫流しその流域に平地があり、集落を形成している。平坦地は狭く、
80%は急峻な山林のため開発は困難であったが、比較的広い地区に人口が集中し、
農業を主体に発展した町である。
この町に、専業農家 藤村憲彦さんを中心とする農業集団がある。
彼らは、稲作の栽培技術に優れ、自分の技術を過信することも無く、
互いに研究熱心で、チャレンジ精神と長年の経験を生かしながら、
飯米はもとより「山田錦」を中心とする酒米造りを手がけ、
優れた三隅町の地力を味方に付けて栽培の難しい「穀良都」にも挑み成功。
新たなる酒米にも挑戦したいという意気込みである。
山口県の新たな食文化を創造するため、意欲的にジャンルを問わず
酒造りを行ない、県南西部の町 小野田産「山田錦」100%使用の「龍王乃杜」
を既に製造発売した実績のある山陽町の永山酒造と共同で
特産品としての地酒開発を試みた。
米と清酒。
農業を中心とした理想的組み合わせから、
山口県発信の農業ブランドとして全国展開を図る予定。
【名前の由来】
お酒のネーミングについては、北長門地域の関係者より、新たな地酒となるような
インパクトがあり覚えやすく売れそうな名前となるように、関東を中心市場とし
地酒の製造販売を長年行っている永山酒造の社長に白羽の矢が立ったのだが、
耳に聞こえの良い名前は既に登録済みのものが多くなかなか
良い名前が浮かんでこず2年越しの課題となった。
しかしながら、はじめから終止一貫してイメージに浮かんでくるのは
国語の教科書の表紙にあった高村光雲の「猿」の彫刻である。
「老猿」という彫刻だという事が分かったが、
何故かネーミングを考えるとその図が頭に浮かんでくる。
「山口」の「猿」で「山猿」という名前を思いついたが
、確固たる決め手がなく決められずに揺れていた。
決め手となったのは、酒についての話しをしに出かけた、
長門市出身の料亭の大将との会話の中で、同じ北長門地域の俵山温泉
の起源に関わる逸話に、薬師如来が化身となった「猿」が現れ、
源泉のありかを村人に教えると言うものがある。
北長門地域にとって猿は縁起がいいと言うのである。
逸話を知らなかった社長はこの話を聞いて鳥肌が立った。
この酒も温泉のように地域の人々の心の癒しとなるかもしれないと思った。
ほかにも山口県には「猿地蔵」をはじめとする猿に関わる民話が
複数存在するほか、郷土芸能としての「周防猿回し」は大変有名である。
努力して やまざる 男たちのもの造りへの情熱を表現するのに
打って付けの名であると、農家の皆さんも大変気に入られ、決定となった。
決してあきらめない、不屈の魂。
大自然を味方につけ、知恵をしぼり活路を切り開くたくましさ。
老いて尚、神通力を得ると言われる老猿の神秘の力。